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2013年5月

住職コラム



2013年夏寺報掲載

2013年8月


 先月末にアメリカのシアトルからお客さんが来られました。本願寺派のシアトル別院のカストロ輪番(住職)の所でアシスタントをされているアイリーン・ゴトーさん(日系3世)です。カストロ輪番は学生時代からの古い友人で、今回アイリーンさんが広島市の親戚を訪問される折に、西楽寺にも訪問するように勧められたようです。1泊された次の日に、山陰の観光をしていただくため坊守と一緒に松江市をご案内しました。松江城・小泉八雲記念館・武家屋敷など楽しんでいただきました。松江城の天守閣の中に展示されているものをゆっくりと見学されたり、小泉八雲記念館では熱心に英語の案内を聞かれたりされるので、小生もゆっくりと見学しました。

 小泉記念館のパンフレットの中に、明治17年小泉八雲が松江に来た年に、東京から松江に入った井上円了(東洋大学創設者で仏教哲学者。日本全国の怪談・妖怪等を調べて、迷信を打破するための妖怪学を研究したことで有名)と出会い、懇談していた事が記載されています。怪談を翻訳した小泉八雲に影響を与えたのでは、と思い色々資料を調べました。でも八雲のひ孫にあたる小泉凡氏(現在島根県立大学教授)の著書によりますと、小泉八雲の著作では井上円了から怪談について教わったとは述べていないようです。しかし、資料によりますと二人は半日も話をしているようで、妖怪研究について話が出なかったとはとても思えません。推測ですが、井上円了と出会ったとき、何か響くものがあって怪談を翻訳したのではと思います。きっと大きな影響を与えたに違いありません。

 アイリーン・ゴトーさんは小さい頃から住んでいた町には仏教寺院がないため両親の勧めもあってキリスト教会に通っておられたそうです。しかし精神的に帰依するまでには至らなかったのだそうです。その後結婚され、娘さんがChurch(チャーチ)に行きたいということで、シアトル別院(Seattle Buddhist Church註@)に一緒に行かれたようです。その時のご法話に感銘を受けられて、それから聴聞を重ねていかれたようです。(シアトル別院のホームページに、開教使助手のアイリーンさんがスタッフとして紹介されています。)別院でのお話しの中に、大きく頷くものがあったのでしょう。そのことをアイリーンさんはresonateという言葉を使っておられます。これは「鳴り響く、共鳴する、共振する」といった意味ですが、「お念仏の教え」が心に何か強く響くものがあったのだと思います。今では輪番(住職)の助手までになって活躍されています。以後成長された子供さんたちはそれぞれの生活をされていても、アイリーンさんは続けてシアトル別院に通い、聴聞を重ねられました。現在輪番(住職)の助手をされ、積極的に寺院活動のお手伝いをされていることはホームページでも伺われます。

 私たちの日本ではどのように浄土真宗のご縁を頂いたかと考えてみますと、多くの方は浄土真宗の門徒の家庭に生まれたから、あるいは浄土真宗の家に嫁いできたから、と答えられるでしょう。直接的な原因はそうであっても、多くの方はお仏壇にお参りすることや、日ごろの習慣に仏縁を結ぶお育てがあってこそだと思います。仏事や法座もそのご縁の一つでありましょう。知らず知らずに身についていく、ということもありますが、育っていく中で何か大きな影響(縁)を受けたということもあると思います。つまりお念仏の教えを聞かして頂いた時に「いのち」の一大事に「あぁ、そうだったんだ!」と大きくうなずくこともあると思います。日ごろの尊いご法縁を大切に致しましょう。この度もまたお盆の法座にて聴聞し、阿弥陀様のお慈悲を喜ぶ人生を歩まさせていただきたいものです。註A

註@:アメリカで仏教寺院が出来た時に、チャーチという言葉で浸透していく狙いがあったのでしょう。

註A:比婆組では10月から第9期比婆組連続研修を開催します。比婆組の19カ寺が協力しまして、2年に渡って各月に12回の研修をします。浄土真宗の教えに出遭い、テーマに添って参加者と話し合いをする研修です。